第7話 フセイン大統領の招待客

パレスチナホテル到着(2003.2.17.Mon)

よもや戦場カメラマン 写真7-1「ああ、無事朝が来たんだ」戦争は夜暗いうちに起こると聞いていたから、カーテンからもれる朝の光に少しほっとした。ホテルのベランダから、バグダッドの街を眺める。すこし霧がかかっていて、街全体がぼんやりとくすんでいる。右側にはチグリス川が見える。ほんとうに私はイラクにきてしまったんだ。

昨晩の状況を思い出しても、まだ夢を見ているようだった。バクダッドの街中に私たち訪問団の車が入ると、サイレンと共にイラクの警察らしきパトカーたちが取り囲むように隊列になって走った。どうやら、先導してくれているらしい。無事ホテルに到着したのは午前1時すぎ。レストランでおそい晩御飯を食べてから眠りについたから、4時間くらいしか眠ってない。

ホテルの名前は「パレスチナホテル」。日本にいる時、滞在するホテルの名前を聞いて少し不安になったのを覚えている。米軍に狙われそうなその名前…。着いてみれば、古いながらも大きくて立派なホテルだった。名目上、私たちは「フセイン大統領の招待客」だったので、滞在費、ホテル内での食事は無料だった。言いかえるならば、彼らにとって私たちは大切な人質。

バグダッド大学へ

長旅の疲れも短時間の睡眠ではとれず、眠い目をこすりながら、バグダッド大学へ。夜は戦争の気配を感じずにはいられなかったけれど、昼間こうしていると、この国に戦争が起ころうとしているなんてウソのようだった。寝不足のせいか、バグダッドの太陽光線はまぶしすぎ、とても青空がきれいだった。

フセイン政権の下では、イラク国民であれば希望者は無料で大学に入れるという。でも、実際は家が貧しければ働かなければいけないので、大学に通える人たちはある程度上流の人たちなのかもしれない。男子学生はおしゃべり好きで人なつっこく、女子学生は恥ずかしがりやで目鼻立ちのはっきりした美人が多かった。日本の大学生より、ずっとピュアで真面目そうにみえた。彼らの未来を、爆弾なんかにつぶされていいはずがない。


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